CONTENTS 6

心の病であるギャンブル依存症・・・
パチンコ業界が果たす役割とは?
求められる体系的
「依存症」への道筋

(平成15年12月8日 東京都文京区後楽園ホテル6階サロン「ルネ」にて)

 昨年はパーラー駐車場での乳幼児死亡事故が上半期に集中した。全日遊連ではこれを受け早々にファンへの注意を喚起するよう各組合員に通達するなど、“のめりこみ”問題が再浮上した感があった。“身近で手軽な大衆娯楽”を標榜するパチンコ業界にとってこれは由々しき問題であり、業界に内包する“ギャンブル依存症”問題として何らかの手だてを講じる必要性に迫られている。
 そこで『グリーンべると』では、日頃「ギャンブル依存症」問題に取り組む各方面の第一人者に今後の道筋を伺った。

本誌
現在、九州地区を中心に全日遊連、都連青年部などギャンブル依存症に対する関心が高まってきています。九州地区では今回の座談会に出席されてます力武部会長の尽力により、すでに大分県、鹿児島県、長崎県でギャンブル依存症に関するセミナーが開かれています。そこでトップ・バッターとしてギャンブル依存症の問題に取り組まれて3年目を迎え、業界の先駆者であります力武部会長からお願いしたいと思います。ギャンブル依存症に取り組むきっかけといいますか、関心を持ち始めた経緯からお話いただきたいのですが。
力武
私どもの店舗でご意見箱というのを設置してます。そこにお客様に意見を入れてもらってまして、私が掲示板で答えるという方式を7年ほど前から実施しています。いろんな意見が入ってくるんですが、ある日サラ金にお金を借りて苦しいけどパチンコが止められないという切実な投書がありました。私も少々CR機が画一的な射倖性を持ち始めていましたので、何とかお答えしたいと思ったんですがなかなか返事に詰まりまして…。いろいろ調べていくうちにギャンブル依存症というものが存在するということを知ったんです。
本誌
確か、地元・大分の社会福祉施設にギャンブル依存症に関する相談を持ち込んだところ、そこで中村さんをご紹介いただいたということだったように記憶しているんですが。 力武 どこに電話していいか分からなくて県の精神保健福祉センターに連絡しました。そこでいろいろ話をするうちにギャンブル依存症施設である「ワンデーポート」というものがあることを知ったんです。
その後すぐに中村さんに連絡したのですか?
力武
そうです。
本誌
中村さんは連絡をいただいた時にどのようなお気持ちを持たれたのでしょうか?
中村
「ワンデーポート」が出来たのが2000年4月で、その時にはパチンコ業界の方にも理解してもらいたいと思っていました。力武さんから連絡が来まして、ありがたいというのと、パチンコ業界でひとりでもこの問題に気づいてくれる人がいればいいと思っていたので、すごく嬉しかったことを憶えています。
本誌
この事がきっかけで依存症問題がその後業界の中で強く意識されていくわけですが、全日遊連で「パチンコ依存症研究会」が設置されたのが昨年4月のことです。ギャンブル依存症問題に取り組むに至るまでの経緯を同研究会の米田副座長の方からご説明して頂きたいと思います。
米田
とにかく射倖性ですね、遊技機の射倖性が非常に高くなってきている。その中でパチンコ業界、全日遊連が望んでいるものはそういう賭博性が高い機械ではなく、あくまでも身近で手軽な大衆娯楽であったわけですが、ただ悲しいかな、一旦許可が下りて近くのパーラーに射倖性の高い機械が設置されると自分の店にも入れないと客が流れてしまう、好む好まざるとにかかわらず導入を図っていかないといけない中で、かなり社会問題化してきたという経緯があります。そういう経緯の中に立ち返って、射倖性の高い機械でかなりのお金を使うことをひっくるめてギャンブル依存症とリンクされる依存症とはどういうものかのかをわれわれ自身が知っておかなければいけないことが根底にありまして、それでギャンブル依存症の問題を取り上げていこうとなったわけです。
本誌
加藤教授にお聞きします。今、射倖性という言葉がでましたが、ギャンブル性の強弱はギャンブル依存症に大きく影響するものなのですか。
加藤
ギャンブル性の強弱が依存症にどのくらい影響しているのかというのはちょっと分かりません。ただギャンブル依存症というのは、心理的な立場から言えば、他の依存症と全く一緒だと位置づけられると思います。ギャンブル性の強弱については推測ですけど、それほど大きな影響を与えているとは思えないのです。ある心理的な特徴を持っているとなんらかの依存症になっていく可能性はあるんだろうとは思っていますが…。
本誌
実はCR機登場時もそうでしたが、ギャンブル性が強くなってきた時にどうもギャンブル依存症の問題が取りざたされる傾向がありましたし、その時に業界としてなんとかしなければならないという議論が高まった経緯がありましたよね。
中村
依存症になるかならないか、ということで言えばこれはあくまで個人的な意見ですけど、社会的逸脱行為に結びつくかどうかでしょう。例えば、1日中遊んで1万円や2万円しか負けないのであれば逸脱行為につながることは少ないとだろうと思います。例えば親が赤ちゃんや小さい子供を放置してギャンブルに熱中する行為自体が社会問題になることが過去にありましたが、本質はそこに明かに心の病があるんです。ギャンブル性が強くなるとそういう部分というのは出やすくなることはあると思います。パチンコパーラーは街中どこにでもありますし、一部の特殊な地域にあるわけではありませんから問題も見えやすいですね。だからパチンコ依存症という言葉が比較的射倖性が高くなると問題として出てくるんではないかと思います。
本誌
ただ競馬などは公営ギャンブルです。パチンコは法律的に娯楽ではないですか。ギャンブル依存症をパチンコ業界として取り組むことはせっかく手軽で身近ということを要望しているのに、世間に対するアナウンスの仕方によってはパチンコはギャンブルだと受け取られる危惧がありませんか。
米田
われわれが目的としているのはパチンコ業界はギャンブルではないよと。例えば極端な言い方をすると、パチンコ店で1日に1000万円を使いたいと思っても使えないんですよ。物理的に無理だ。ところがカジノや競馬場では、たったの何分かで100万円でも1000万円でも使えるんです。したがってギャンブルとパチンコとは根底で違っているんです。しかし、そういう中にあっても全国的にパーラーの数が多いですから、中には一線を越えてしまうファンもいるけど、ここをどうしようかというのが我々の問題意識の中心を占めているわけです。
本誌
つまり他の公営ギャンブルと一線を画したパチンコ業界独自の施策が重要だと。
米田
そうですね。ですから法的にはギャンブルでないパチンコ業界ですから、こうした前提に立ったうえで依存症問題に対するケアを考える必要があると思います。
本誌
この点、中村さんはいかがですか?
中村
1日の投資額が平均でどのくらいかは分かりませんが、負ける時は20万も30万円も負ける遊びがギャンブルじゃないというのは社会的に通用しないと思います。アメリカのカジノのスロットマシンは、賭ける金額が台によって違いがあります。1ゲーム25セントの台もあります。つまり、1日遊んでも日本円で数千円しかつかわないわけです。もちろん1ゲーム5ドルの台もあります。入口には「MUST BE 21」(21歳以上)とはっきり書いてあって、入口でもIDをチェックしてますよね。アメリカと日本の文化が違うということはひとつあると思いますけど、法的な話はともかくとしてパチンコはギャンブルだと思いますよ。

ギャンブル問題からすると、アメリカより日本のほうが深刻です。パチンコにまつわるいろいろな事件が起きているのもそうだし、多重債務問題や消費者金融の問題があり、それは業界とは関係のないことかも知れないですけど、気楽に借りられていつでも2万、3万のお金を賭けられる環境。ギャンブル依存症が出やすい風土にあると思います。

私はパチンコ依存症という言葉があまり好きじゃないんです。それはテレビとかマスコミで、人間失格で道徳の欠けた人たちというような主婦のパチンコのめり込みなどを扱う番組を制作するテレビ局にも問題があると思います。そういう番組が誤解と偏見を生みだしているのは明らかです。ただ、パチンコ業界がパチンコはギャンブルじゃないと言ってることがかえってパチンコ依存症という言葉に負のイメージを定着させパチンコ業界が批判されているように思います。
本誌
ただ、法的な枠組みでいきますとやはり違います。
力武
そうですね。中村さんがおっしゃることはすごくよく判りますが、身近な娯楽であるがために主婦の人とかがのめり込みやすい状況というのはもちろんありますし、18歳以下の方でも受け入れてる店は実際あるわけです。ところが私たちの業界の組合として取り組む以上、法的にはパチンコはギャンブルではないという前提がないと踏み込めない。
米田
中村さんにお聞きしますが、例えばギャンブル依存症が問題になっているのはここ何年くらいですか?
中村
ここ10年くらいでギャンブル依存症の大半がパチンコを原因としているようです。GA(ギャンブラーズ・アノニマス、ギャンブル依存症に関する自助団体)が出来た当時は競馬とか競輪で、パチンコで来る人はほとんどいなかったらしいんですが、最近はパチンコ、パチスロが大多数です。これははっきりしてます。
力武
GAが出来た当時というのは、どのくらい前ですか。
中村
10年ちょっと前ですよね。
米田
それからいくとフィーバー機が出てきたのは1981年です。24年ほど経ちます。当時は一世を風靡したわけですが、あまりにも出玉が多過ぎるということで出玉規制や台数規制があって、81年くらいから約2年間で消え去りました。ところが10年前というとCR機がちょうど出だした頃なんです。
力武
でも、依存症はそれ以前にも罹患者がいたでしょうね。これが表面化するまでに時間がかかるものですから。
米田
なるほど、ではフィーバー機のころから問題は潜在化していたと。
中村
確か昭和50年代半ばには「サラ金パニック」がありましたよね。その時に多分パチンコのことも社会から批判されてるはずなんですよ。その頃から続いていると思いますよ。
力武
おそらくその頃に今の消費者金融が問題になっているのでしょうね。
加藤
1980年代頃から引きこもり問題が出だしてるんです。今、80万人から120万人いるんですよ。この10年でいうと母親の幼児虐待が猛烈な勢いで、届け出だけで15倍くらいですか。1980年代という非常に景気がいい時代にかえってうつ病は増加してるんです。私らも80年代の頃から、「うつ病増加!」と叫んでたんだけど誰も相手にしてくれない。ところが今になるともう大企業のうつ病は大問題です。景気がいいから問題にならなかったが、実は1980年代ぐらいから非常に心理的な問題が日本の社会に発生しるんですよ。もしかすると今日のテーマのギャンブル依存症とも関係しているかもしれない。

ところで中村さんに質問なんですけど、アメリカのギャンブル依存症の本によると、親が依存症だった罹患者というのが非常に多いとあるんですけどそういうことはあるんですか。
中村
あるとおもいます。しかし結論は出てないみたいですよ。遺伝だろうという人もいるだろうし。
加藤
私は遺伝的なことではなくて環境が、親がギャンブル依存症でもアルコール依存症でも子供は放ったらかされます。そうすると子供は親に相手にされないからそこで悩みを抱えて依存症になっていくというか。体質的な遺伝じゃなく環境が遺伝するというようなことなんですけど、日本でもギャンブル依存症になった人の親がアルコール依存症だったりとか、そういうことは多いかなと思っているんですが。
中村
調査されてないですが多いと思います。
本誌
加藤教授は、依存症について人間関係にも問題があるんじゃないかということを昨年10月22日の都遊連主催で行われた研修セミナーで話されていますが、教授自身は依存症というものをどのように捉えられているのでしょうか?
加藤
私は中村さんのように依存症の人と日常的に接して治療をやってませんので多少実態と離れるかもしれないですが、この人はギャンブル依存症になる、アルコール依存症になるということではなく、たまたまその依存症になる心理的な問題を抱えていた人が「何に出合うか」で違ってくると思います。

パーラーというのは街中どこにでもあります。だから非常に目立ってくるのではないでしょうか。確かに中村さんが言われてたように社会的逸脱行為だから社会的に問題になるわけです。私は心理的な立場で言いますと、ギャンブル依存症の人と仕事依存症の人とが心理的に大きな違いがあるとは思えないのです。ところが社会的には非常に大きな違いがあるわけですよ。だから、社会的な問題というのと心理的な問題をごっちゃにするのはいけないと思います。

最後の結論のようなことを最初に言いますが、治療の場合に「依存症シフト」というのでか、ある依存症kら別の依存症にシフトさせる、できればそれは社会的にあまり問題視されない仕事依存症そのものの質を変化させていくことは可能だろうと考えます。
本誌
米田副座長。全日遊連で依存症研究会を立ち上げたきっかけは社会的に問題に対してのケアをしていこうということだったと思いますが。
米田
幸いに力武さんが非常に経験が豊富ですので彼の話を聞かせていただいている中で、ギャンブル依存症というのは病気なんだという認識をいかにパーラーのオーナーに知ってもらうかが大事だと思うようになりました。この啓蒙活動をこれからやっていくのに、オーナーにはかなり抵抗感もあるでしょうし、なかなか時間もかかることだと思いますが、この認識を我々業界に浸透させることがまずは重要だと考えます。
加藤
これは依存症全般にいえることですが、日本ばかりではなくてアメリカのギャンブル依存症の人がなんでギャンブル依存症になっているかという事例を書いてある本があるのですが、それを見ると、ある子供が高校生の頃からギャンブルを始めるようになる。  その場合はまず家にいる時も父親が仕事、仕事で晩ご飯を一緒に食べてても頭の中は仕事だけと。それで、親戚の同じ年頃の子がスポーツや勉強でいい成績を上げた等と言われるとその子は家庭の中で自分の居場所がないわけですよ。そういう子供は学校に行くと、学校でもいい成績を上げられないから居場所がない。ところがギャンブルでお金を持つと、今度は仲間を連れてピザ屋へ行った時に自分がお金を払ってそこで自分が初めて男になれたという感覚を持ったというのです。ですから、家庭などで居場所がないということは大きな原因のひとつになってくると思います。  さっき「周り」といいましたけれど、ギャンブル依存症になった人だけを責めるというのは、もちろん本人が一番悪いというのは当然なんですが、やはり周りにも原因がある。
中村
ギャンブル依存症についてルイジアナで調べたら10万人から20万人も問題のある人がいるとの調査結果が出たらしいです。24時間のヘルプライン(編集部注:カジノ版命の電話)があってルイジアナ州だけで1年に6万件も電話があるそうです。(カジノに設置されている実際のパンフレットを見せながら)例えば子供を預かるところがありますよというこういうパンフレットがあって、依存症についてのパンフレットもカジノには置いてあります。今日は持って来なかったんですけど州が作ってるギャンブル依存症に対する啓発のパンフレットもあります。
本誌
こちらでいうと自治体ですね。
中村
そうです。カジノの総合的なパンフレットでは、ヘルプラインのことが載っていて依存症にならないためにということが書いてある。ある調査では、カジノの従業員の15%はギャンブルに対して何らかの問題を抱えているという結果が出てます。一般的にはギャンブル依存症は人口全体の1.7%から2~3%。調査も難しいみたいでいろいろな調査でいろいろな数字が出ているみたいですけど、15%というのは非常に高い数字ではないでしょうか。
本誌
従業員の依存症については、実際にはまだ日本で問題になってませんね。
中村
おそらく依存症というのが人間失格でどうにもならない人間だという間違った認識があるからだと思います。だから本当にどん底までいかないと(病気と)認められないのが日本の現状です。私がいろいろなところへ行って依存症というのはこういう病気ですよと口で言ってもなかなか伝わらない。だからフォーラムに参加して回復した人の話を聞いて誤解と偏見を取ってくださいということをお願いしてます。取材を受けると最初に必ず言われるんです。記者の方に。「誤解と偏見のないように私はパチンコ依存症問題とかギャンブル依存症問題に積極的に取り組みたいと思います」と。ところが取材の中で「中村さんはぜんぜん依存症という感じがしませんよね」と言われることがあります。依存症はこういうものだという固定観念がマスコミの方にも根強く残っています。
本誌
力武さんは研究会の中でいろいろな質問を受けたと思いますが、その中で力武さんからメンバーに強調されてきたことはどういったことだったんでしょうか?
力武
依存症問題に取り組むことに反対される方は表面的に見られて「なんでそういうデメリットになるような問題に積極的に関わるんだ」ということを言われます。マニアであるヘビーユーザーの方と依存症を混同して考えて、私どもはマニアを作るのが仕事であってそれを依存症呼ばわりして排除したら産業自体が冷え切ってしまうのではないかとの意見があるのです。でもマニアと依存症は明かに違います。マニアの方はパチンコを楽しんでいる。そこの違いをきちんと認識していかないと誤解を生みます。現状というのはすごく悲惨な問題がたくさんあって自殺未遂であるとか、一家離散であるとか、大変な問題がたくさんあるんです。そういう現状を知った上で反対なら反対と言うべきだと思います。まずこの問題に対して業界の人が理解するにあたっての材料が少なすぎるという気がします。
米田
力武さんが言ったように材料不足がかなりあるという中で、全国の理事の方にお話をしてかえって誤解を生じられたのではマイナスになってしまう。まずはオーナー向け、のアンケート調査をしていく必要があり、パチンコファンに対してもアンケート調査をしましょうと。組合向けのアンケート調査の方は既に回答がかなり返ってきていますが、ファン向けのアンケート調査については昨年12月4日から7日の4日間のうち2日間をパチンコ、パチスロの勝ち負けをした後ではなく、ある程度の時間を決めて入店してきた時にアンケートを取っています。それでないと、負けたお客さんがカッとなるような場合もありますし、感情が入るといけないですから。
加藤
力武さんが言いましたマニアと依存症の違いなんですが、私は自己実現してる人と依存症の違いに分けて捉えるようにしています。力武さんの言っているマニアというのはこういうふうに考えればいいと思います。毎日パチンコをするけれどもお金が無くなったらパチンコをしない。でも、パチンコしない日が続いても平気。だけどパチンコする時はパチンコを楽しむ。対して依存症というのはお金があろうが無かろうがとにかくパチンコをしないではいられない。本人はパチンコをすることはよくないと思っている。本当に楽しんでる人というのは止めなければいけない時に止められる。だからマニアと依存症の区別は大切ですよね。毎日パチンコやってり人はギャンブル依存症かというと決してそうじゃない。
原因追求より対策実施が急務 ≫

「情熱リーグCP篇」