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ギャンブル依存症者の回復へ 広がる活動の輪

(アミューズメント・ジャパンより)

神奈川県と共催で「ギャンブル依存症者のためのフォーラム」を開催

 ギャンブル依存症者のための回復施設「ワンデーポート」が3周年を迎えた。5月5日、3周年記念のフォーラムが横浜で開催され、パチンコ業界関係者がはじめて、ギャンブル依存症者やその家族の前で講演を行った。

 ワンデーポートは現在わが国で唯一のギャンブル依存症者のための回復施設だ。自らもギャンブル依存症者で、施設長を勤める中村務さんを中心に、医師やギャンブル依存症者本人、その家族などが2000年4月に横浜市瀬谷区に立ち上げた。

 ワンデーポートの活動については本誌2002年6月号で詳しく取り上げたが、ギャンブル依存症がまだ社会的に病気として認知されていない状況からスタートして、この4月で3周年を迎えた。その間、全国紙などの一般メディアにも取り上げられ、活動の和は徐々に広がっていった。今年3月には神奈川県が実施する「かながわボランタリー活動推進基金21」の対象事業のひとつに決定するなど、その活動が行政からも認知されるようになった。今後5年間は、神奈川県と協働でギャンブル依存症に関する調査・研究を行うことで、県から事業負担金を受けることができる。

 5月5日、横浜市の神奈川県民センターで行われた「ギャンブル依存症者のめのフォーラム」は、かながわボランタリー活動推進基金21との協働事業として行われた。テーマは「継続」。ギャンブル依存症者やその家族ら約200名が参加した。会費は無料で、参加者にはギャンブル依存症に関するアンケート用紙が配布された。

 この日のフォーラムでは、大分県遊協青年部会長で九遊連社会貢献委員長を務めるセントラル カンパニー社長の力武一郎さんが、パチンコ業界関係者としてははじめて、ギャンブル依存症者やその家族を前にして講演を行った。

 力武さんは昨年4月に大分県で中村さんらを招いてギャンブル依存症に関するセミナーを開催するなど、この問題に取り組んできた。今回は、これまでとは逆の立場でギャンブル依存症者と向き合うことになった。

 フォーラムではまず中村さんが3年間を振り返り、今後の抱負を語った。「ワンデーポート3周年ということで、今日のテーマは継続です。ギャンブル依存症はやめ続けることが大切。やめることは簡単だけど、やめ続けることは大変です。今年からはワンデーポートは神奈川県からお金をいただいて活動できることになりました。でも、ワンデーポートの活動自体が大きく変わるものではありません。当事者が当事者を助けることで回復を目指していくケアサポートを主体とした活動であることは変わりません。協働事業については、5年までという継続期間があります。その間に調査・研究をやっていくわけですが、足元を見ながら、自分たちにできる活動をやっていきたいと思います。

 私はワンデーポートで、与えられるということを感じました。自分からああしようこうしようと思ってもうまくいかなくて、流れの中でどうにかなると思ってやってみたことが続いている。3年前にはまさか、公的補助が受けられるようになるとは思ってもいなかった。社会は変わるし、ギャンブル依存症に対する見方も、もしかしたら少しずつ変わっているのかなと思います。3年前、岩崎先生(岩崎メンタルクリニック院長)が『パチンコ業界の人がのこのなかにいてくれたらどんなに素晴らしいだろう』と言っていました。そして今日は力武さんが来てくれた。まさか業界の人に私たちのフォーラムで話をしてもらうなんて考えてもいなかった。でも今回お呼びすることができた。それも、活動していく中で、与えられたことだと思っています。これからも継続していけば、課題が与えられて、クリアすることで、一歩一歩前進していけると思います」

 力武さんは、ギャンブル依存症とその家族を前に、次のような話をした。「今日、依存症の方や、そのご家族の方もいらっしゃるなかで、私がお話をさせていただくことは、針の筵の上にいるような気持ちです。昨日、中村さんと久しぶりに話をしました。福岡のフォーラムのときに6人の仲間の話を聴いていて、私は非常に心苦しく、グサっと刺さりました。その6人のうち2人が(ギャンブルに)戻ったという話を聞いて残念でした。だから今日会場に来たときに、ああこの人は大丈夫だったんだ、この人もだ、と挨拶をしていました(会場笑)。同時に、戻った2人は誰と誰だということもわかって、この病気の怖さを痛感しました。

 私がこの業界に入って20年になります。最近は接客もよくなり、女性の方でも安心して入っていただけるようになった。でも、かえってそれがギャンブル依存症という深刻な事態を招く結果にもなっているのではないかと思います。  私がギャンブル依存症の問題に取り組みはじめたのは、店に設けている掲示板に書かれた負けた人の投書がきっかけでした。これは深刻問題だなと思った。いろいろ調べてワンデーポートの中村さんと出会いました。ワンデーポートがはじまって半年くらいのときでしょうか。そして何をしようかと考えたときに、パチンコ業界の人たちにこういう問題があると知っていただかないと何もはじまらないと思って、大分県でギャンブル依存症のセミナーを開催させていただきました。

 パチンコ業界のなかには、この問題に拒否反応を示す方も多いことは事実です。でも大分でセミナーを開催した頃から徐々に私の話に賛同してくれる方が出てきて、今では九州の青年部の仲間が一緒に活動をしています。

 パチンコ業界では、日遊協がギャンブル依存症に関するアンケートをされて取り組んでいます。パチンコチェーンストア協会はギャンブル依存症に対する相談窓口を設けていきたいと宣誓しています。東京都の都遊連青年部会もギャンブル依存症に関する調査研究を今後行っていくことを決めました。また、関西の3都青年部会(京都・大阪・兵庫)が4月22日に合同セミナー開催して、早稲田大学の加藤諦三教授が依存症に関する講演を行っています。少しずつではありますが、広がりをみせはじめています。

 九遊連青年部では3つの柱を中心に活動しています。ひとつはワンデーポートのPOPを店内に貼っていただくこと。これを全国のホールで貼れば、相当な数のギャンブル依存症の方が救えるのではないかと思っています。そしてワンデーポートへの献金。もうひとつの柱が、各県でセミナーを開催していくことです。私は、アメリカにあるような命の電話、ホットラインのような施設を築きたいというのが、最終的な目標です。ワンデーポートの活動が広がって対処できなくなったときには、私どもがお金を出し合ってそういう施設を作っていきたい。

 私はこの活動を自分のためにやっています。パチンコのおかげでゴハンを食べさせていただいて大きくなり、大学まで出させていただいて、パチンコのおかげで、部下と愛する家族を養っている。そのパチンコが、みなさまを楽しませるよりも、苦しませる方が大きい存在になったら、社会的に私の存在意義はないんです。私は自分を愛するために、今後もこの活動を続けていきたいと思います」

 フォーラムではこのほかに、4人のギャンブル依存症本人が自分の体験を語った。また、こころの相談室「リカバリー」代表の吉岡隆さんが講演を行った。そしてフォーラムの最後に、東海大学健康科学部社会福祉学科専任講師でワンデーポート運営委員でもある宮永耕さんがこう結んだ。

 「ワンデーポートの3年間は、奇跡の連続でした。先の見通しもなくはじめたのが2000年。いろんな奇跡が起こってここまで来ることができました。神奈川県の協働事業に決まったことも奇跡でした。とはいえ、財政的にまだ脆弱なことに変わりはありません。これからもみなさんの献金を必要としています。現在の社会はギャンブル依存症になるリスクに満ちています。依存症は自分ではどうにもならない病気です。そこからの回復者は社会における貴重な資源ともいえます。今後もどんな形であれ、みなさんワンデーポートにかかわっていってください」

 この日の参加者のアンケートでは、力武さんの講演に関する批判は一切なかった。「はじめは批判的に聞いていたが、最後は感動した」といった好意的な意見が多数だったという。

「情熱リーグCP篇」